Favorite Movies  

 気に入っている映画を,独善コメント付きで何となくリストアップして行きます。古くて申し訳ない。
 概ね,思い付いた順(昇順)。

ワイルド・バンチ The Wild Bunch (米 1969)
監督:Sam Peckinpah,原案:Walon Green,Roy N. Sickner,脚本:Walon Green,Sam Peckinpah
音楽:Jerry Fielding,撮影:Lucien Ballard,編集:Louis Lombardo
出演:William Holden,Ernest Borgnine,Robert Ryan,Edmond O'Brien,Warren Oates,Ben Johnson,Emilio Fernandes,Strother Martin,L. Q. Jones
 余計なところで説明的なカットバックを用いて情緒を削いだり,意外に普通以下の出来にもなってたりする箇所が多少苦々しくはあるものの,むさ苦しさと疲労感をああまで見事にフィルムに塗ったくれる人も珍しく(多分),総じて,ペキンパー映画のカット切り替えのリズムは大好きなのでついつい見入ってしまいます。特に,破滅への道を自ら選び取る瞬間のあの“間”は絶妙。莫迦です。壮大な徒労の物語。
 因みに,ペキンパー印のスローモーションが最も映えたのは,機関士がホールデンに脅されて機関車から飛び降りるシークェンス。

北国の帝王 Emperor of the North (米 1973)
監督:Robert Aldrich,脚本:Christopher Knopf,脚色:Sam Peckinpah
音楽:Frank DeVol,撮影:Joseph Biroc,編集:Michael Luciano
出演:Lee Marvin,Ernest Borgnine,Keith Carradine
 1930年代の大恐慌の落とし子であるところの,無賃乗車であちこち渡り歩く hobo と呼ばれる浮浪者の一人,狙った列車には必ず目的地まで乗り続けることで「北国の帝王」と渾名されるエース・ナンバーワン(リー・マーヴィン)と,自分の乗務する列車への無賃乗車を断じて許さず,仮にそのような手合いが居た場合生きては絶対に返さないことで「人斬りシャック」と恐れられる車掌(アーネスト・ボーグナイン)との,盾と矛の意地の張り合い――と云う筋立てを聞いても燃えない向きにはまるで用のない偏屈映画。

特攻大作戦 The Dirty Dozen (米 1967)
監督:Robert Aldrich,原作:E. M. Nathanson,脚本:Nunally Johnson,Lukas Heller
音楽:Frank DeVol,撮影:Edward Scaife,編集:Michael Luciano
出演:Lee Marvin,Ernest Borgnine,Robert Ryan,George Kennedy,John Cassavetes,Donald Sutherland,Charles Bronson,Terry Savalas,Jim Brown,Ralph Meeker
 要するに「ならず者部隊」。私にとってはとてつもないオールスターキャスト映画で,軍刑務所の中庭に並べられたとてもムサくてスターな受刑者どもを,憲兵が読み上げるそれぞれの罪状を聞きながらやはりムサくてスターなマーヴィンが閲兵するオープニングでは危うく目眩を起こしかけました。
 因みに,アルドリッチ(オルドリッチ)の映画をジャンル分けすればアクションの部類に入りはしましょうが,どちらかと云えば,ムサいおやじ連中の不機嫌なツラをフィックスのフレーム内に突き合わせるだけで濃密なサスペンスとブラックユーモアを醸し出せる,そのセンスが真骨頂と思われます。『北国の帝王』も『燃える戦場』 Too Late the Hero (米 1970) も『ロンゲスト・ヤード』 The Longest Yard (米 1974) も『合衆国最後の日』 Twilight's Last Gleaming (米 1977) も『飛べ!フェニックス』 The Flight of the Phoenix (米 1965) もそんな感じ。どっちかって云うとサスペンス映画。あるいはお祭り映画。アクションはおまけで,潔いほどに投げやりです。

ジャガーノート Juggernaut (英 1974)
監督:Richard Lester,脚本:Richard DeKoker
音楽:Ken Thorne,撮影:Gerry Fisher,編集:Antony Gibbs
出演:Richard Harris,Anthony Hopkins,Ian Holm,Omar Sharif,David Hemmings
 豪華客船に仕掛けられた爆弾を巡る,爆弾処理班と犯人と捜査当局の駆け引き。主軸はもちろん爆弾の解体。最後,信管につながる線2本のうちどちらを切るか,結末判って見てても結構ハラハラします。リチャード・レスターと云えば,ウィバーリの「子鼠シリーズ」の映画化『月ロケットワイン号』(英 1963 原題知ラズ)だの,『三銃士』 The Three Musketeers (英 1973),『四銃士』 The Four Musketeers (英 1974)だの,昔風(サイレント風)のドタバタ喜劇をたしなまれるんですが――しかもそのどれもがあまり面白くないんですが,サスペンスは作れるんですね。ビックリです。

アウトロー The Outlaw Josey Wales (米 1976)
監督:Clint Eastwood,原作:Forrest Carter,脚本:Phil Kaufman,Sonia Chernus
音楽:Jerry Fielding,撮影:Bruce Surtees,編集:Ferris Webster
出演:Clint Eastwood,John Vernon,Chief Dan George,Sondra Locke,John Russell
 妻子を殺した北軍ゲリラ,ならびに,裏切り者の南軍ゲリラリーダー(これは誤解)を追う農夫の復讐劇――なのですが,その道行きに珍妙な同行者がどんどん増えるに従って,陰々滅々(と云うほどまでではないにしても)とした雰囲気が徐々に薄れていくのが面白く,イーストウッドの西部劇ではこれが一番好きです。アルドリッチ,ペキンパー以上に“目の会話”が重要で,何かもう……しみる。

マーフィの戦い Murphy's War (英 1971)
監督:Peter Yates,原作:Max Catto,脚本:Stirling Silliphant
音楽:John Barry,Ken Thorne,撮影:Douglas Slocombe,編集:Frank P. Keller,John Glen
出演:Peter O'Tool,Sian Phillips,Phillippe Noiret,Horst Janson,John Hallam
 極めて非個人的な戦争の命ずるところにより船を沈め,やはりその戦争から生じるある種の必要性の命ずるところにより乗組員を虐殺したUボートに対し,沈められた船の唯一の生存者が復讐の鬼と化して極めて個人的な戦争を仕掛けると云う対比構造を持つイヤ映画。原作では虐殺の責任を一人のバリバリのナチ党員に帰していたところ,映画ではその生存者を含めて特に誰を悪とも決めつけられなくしてあってイヤさ倍増し。
 ピーター・オトゥールと水上機と魚雷とクレーンのパラノイドな演技がギラリと光る,わたし的にはとてもイギリス映画らしい“地味派手さ”と筋立ての小品なのですが,残念なことに,配給の関係で公式的にはアメリカ映画です。

リオ・ブラボー Rio Bravo (米 1959)
監督:Howard Hawks,原作:B. H. McCampbell,脚本:Jules Furthman,Leigh Brackett
音楽:Dimitri Tiomkin,撮影:Russell Harlan,編集:Folmar Blangsted
出演:John Wayne,Dean Martin,Ricky Nelson,Angie Dickinson,Walter Brennan,Ward Bond,John Russell,Claude Akins,Harry Karey, Jr.
エル・ドラド El Dorado (米 1967)
監督:Howard Hawks,原作:Harry Brown,脚本:Leigh Brackett
音楽:Nelson Riddle,撮影:Harold Rosson,編集:John Woodcock
出演:John Wayne,Robert Mitchum,James Caan,Arthur Hunnicutt,R. G. Armstrong,Christopher George,Edward Asner
ハタリ! Hatari ! (米 1962)
監督:Howard Hawks,原案:Harry Kurnitz,脚本:Leigh Brackett
音楽:Henry Mancini,撮影:Russell Harlan,編集:Stuart Gilmore
出演:John Wayne,Hardy Kruger,Elsa Martinelli,Red Buttons,Bruce Cabot
大列車強盗 The Train Robbers (米 1973)
監督・脚本:Bert Kennedy
音楽:Dominique Frontier,撮影:William H. Clothier,編集:Frank Santillo
出演:John Wayne,Rod Tailor,Ben Johnson,Christopher George,Ann Margret
戦う幌馬車 The War Wagon (米 1967)
監督:Bert Kennedy,原作・脚本:Clair Huffaker
音楽:Dimitri Tiomkin,撮影:William H. Clothier,編集:Harry Gerstad
出演:John Wayne,Kirk Douglas,Howard Keel,Robert Walker,Keenan Wynn,Bruce Cabot,Bruce Dern,Emilio Fernandez
オレゴン魂 Rooster Cogburn (米 1975)
監督:Stuart Millar,脚本:Martin Julien (Charles Portisの小説の登場人物を元に)
音楽:Laurence Rosenthal,撮影:Harry Stradling, Jr.,編集:Robert Swink
出演:John Wayne,Katharine Hepburn,Richard Jordan,Strother Martin
 ジョン・ウェインで括ってます。特に上3本,ホークス=ブラケット=ウェインのトリオの映画は,愉快なキャラクタたちによる,ドライでもウェットでもない調子よい掛け合いが楽しくて仕方ありません。『リオ・ブラボー』でウォルター・ブレナンが演じる保安官助手は,私の中では今もって最高のジジイ・キャラです。『エル・ドラド』は『リオ・ブラボー』の改作と云うのか,キャスティングを入れ替え,設定をちょいといじった相似映画。稲垣足穂みたいなことしてます。
 バート・ケネディのはもっとブラックなテイストが入っていてまた別の面白さがあります――とは云え,「先に倒れたのは,オレが撃ったヤツだぜ」「背が低いだけにな」くらいしか思い出せないんですが。物語もちょっとひねりが入ってたりするので,『大列車強盗』"The Train Robbers"のタイトルがどうして『大列車強盗』"The Train Robbers"なのか,おかげさまで首をひねらされました。
 最後のは,ウェインが何故かオスカーを獲った『勇気ある追跡』True Grit(米 1969)の続編で,こっちを先に見たせいか正編より好きです。頑固者の老保安官と頑固者の老シスターの掛け合いがこれまたたまりません。悪役リチャード・ジョーダンの貫禄不足が残念と云えば残念です。

戦略大作戦 Kelly's Heroes (米 1970)
監督:Brian G. Hutton,脚本:Troy Kennedy Martin
音楽:Lalo Schifrin,撮影:Gabriel Figueroa,編集:John Jympson
出演:Clint Eastwood,Terry Savalas,Donald Sutherland,Don Rickles,Carroll O'Conner,(Harry) Dean Stanton
 フランスのとある町の,ドイツ軍に接収された銀行に眠る金塊を,休暇中のアメリカ兵がわざわざ前線を突破して盗みに行く,戦争映画のフリした犯罪コメディ――敵の盗るんだから犯罪とは云い切れないかも判りませんが,かと云って犯罪ではないと云い切るのもはばかれる灰色映画です。物語もキャラクタもいちいちいい具合にデタラメで面白くてご機嫌なのもさることながら,大道具小道具がクソ真面目で大作っぽく物量あるのでいっそう笑えます。
 笑いに手を抜いちゃいけません。

大いなる勇者 Jeremiah Johnson (米 1972)
監督:Sydney Pollack,原作:Raymond W. Thorp,Robert Bunker,脚本:John Milius,Edward Anhalt
音楽:John Rubenstein,Tim McIntire,撮影:Duke Callaghan,編集:Thomas Stanford
出演:Robert Redford,Will Geer,Stefan Gierasch,Allyn Ann McLerie,Josh Albee,Charles Tyner,Delle Bolton
 話に聞くデイヴィ・クロケットのような出で立ち――アライグマだかビーバーだかの帽子被って鹿皮の服着て先込め銃担いで,ロッキーの山の中へ分け入った人たちが合衆国の”開拓”時代に存在しました。チャールトン・ヘストンとブライアン・キースが主演した『ワイオミング』 The Mountain Men (米 1980) の原題にあるように,彼らはマウンテン・マンと呼ばれ,これもそうした山男たちの一人を描いた映画。大昔にTVで1,2度見ただけでうろ覚えなんですが,例えば『ワイオミング』のように王道娯楽作品としてまとめずに,割と淡々とドキュメンタリー仕立てで作られてたのが印象に残ってます。

風とライオン The Wind and the Lion (米 1975)
監督・脚本:John Milius
音楽:Jerry Goldsmith,撮影:Billy Williams,編集:Bob Wolfe
出演:Sean Connery,Candice Bergen,Brian Keith,John Huston,Geoffrey Lewis,Steve Kanaly
 片や,ヨーロッパ列強の云いなりになるスルタンを失脚させるためにアメリカ人母子を誘拐したベルベル人首長。片や,これをきっかけにモロッコへの権勢の伸張を図ろうとするテディ・ベア 26代大統領。帝国主義の影重く,基本設定だけ並べるとまるで潤いがありませんが,しかし両者は頑固ながらも素朴な価値観の持ち主として描かれていて,全体は何ともロマンチックな英雄譚。クライマックスも,そう云った英雄たちに憧れる人質の少年の視座で締めくくられて風情があります。「祭り」の終わり。悠久の海。
 後にミリアスが珍奇でキナ臭い勧善懲悪戦争映画しか撮らなくなるのは,「英雄」を希求するが故なのか。

バンデットQ Time Bandits (英 1981)
監督:Terry Gilliam,脚本:Michael Palin,Terry Gilliam
音楽:Mike Moran,George Harrison,Trever Jones,撮影:Peter Biziou,編集:Julian Doyle
出演:Sean Connery,Ian Holm,Ralph Richardson,David Warner,John Cleese,Michael Palin,Craig Warnock
 昔,神様は天地を創造するにたった七日間しか時間をかけませんでした。造り急ぎのツケが,この世のあちらこちらにある時空のほころび。天地創造を手伝った小人達はそこに目をつけます。神様から盗んだ世界の設計図を元に,ほころびを探し出しては様々な時空を駆け巡って泥棒稼業――詰まるところ彼らは,設計図を返せと神様に追いかけられるばかりでなく,それさえあれば世界を征服出来ると野望に燃える悪魔にも狙われることになるのです。そんな騒動に人間の少年も巻き込まれ,大変なんだか愉快なんだかよく判らない珍妙不可思議な旅をさせられるハメに。
 この頃のギリアムの幻想とエンタテインメントのバランスが,私には丁度いい感じでした。

オスロ国際空港/ダブル・ハイジャック Ransom [US: The Terrorists] (英 1975)
監督:Casper Wrede,脚本:Paul Wheeler
音楽:Jerry Goldsmith,撮影:Sven Nykvist,編集:Eric Boyd-Perkins
出演:Sean Connery,Ian McShane,John Quentin,Jeffrey Wickham,Robert Harris,Norman Bristow
 ノル――じゃなくて北欧のとある国で,イギリス大使館と旅客機を乗っ取ったイギリス人テロリストグループと,ノル――じゃなくてその国の保安当局やイギリスの大使館付き武官たちとの,三つ巴の駆け引きを描いたサスペンス映画。
 本国イギリスで当たらず,アメリカでタイトル変えて公開しても当たらず,日本でも話題にならなかったそうです。装いが地味なので仕方ないんでしょうが,テロリスト(と,穏便に済まそうとする上司)を如何に出し抜くかやら最後のどんでん返しやら,割と凝った造りになってて退屈しませんし,ショーン・コネリーと雪が出て来るし(<だから?),尚且つ安易アクションと安易バイオレンスが出て来ません。
 ちなみに,邦題,吹き替えとも,まるでノルウェイでの話のようになってますが,原語では特に何処とは云ってないようです。スカンジナビアの何処か。脚本家本人によるノベライゼーションでは「ノールラン」となってたような記憶が。「北の国」。

王になろうとした男 The Man Who Would Be King (米 1975)
監督:John Huston,原作:Rudyard Kipling,脚本:John Huston,Gladys Hill
音楽:Maurice Jarre,撮影:Oswald Morris,編集:Russell Lloyd
出演:Sean Connery,Michael Caine,Christopher Plummer,Saeed Jaffrey,Daghmi Larbi,Shakira Caine
 ショーン・コネリーつながりでズルズルと4つ目。これは,19世紀,植民地時代のインドでの話。落ちこぼれ下士官コネリーとマイケル・ケインが,イギリスの権勢の及ばない土地で一国一城の主になろうと軍を脱走してハイバル峠越え。コネリーが首から下げていたフリーメーソンのメダルがその奥地に伝わるアレクサンドロス大王の残した印と酷似していたことから,大王の生まれ変わりと勘違いされてホントに王様になっちゃうと云う,そのあとのオチも含めてまんま昔のホラ話風味の(と云うか,キプリングだし),最早 70年代以降にあっては「だから何?」みたいなご機嫌映画。ヒューストン万歳!

脱走山脈 Hannibal Brooks (英 1968)
監督:Michael Winner,原案:Michael Winner,Tom Wright,脚本:Dick Clement,Ian Lafrenais
音楽:Francis Lai,撮影:Robert Paynter,編集:Peter Austen-Hunt,Lionel Selwyn
出演:Oliver Reed,Michael J. Pollard,Wolfgang Preiss,John Alderton,Helmut Lohner
 イギリス兵オリヴァ・リードがドイツ軍の捕虜になって,そこでやらされたのがゾウの飼育係――戦争嫌いの彼のこと,脱走なんか忘れてむしろそれに熱心に打ち込むのですが,町(と動物園)が連合軍の爆撃を受けたために動物たちを避難させることになり,彼もそのゾウを別の動物園に運ぶ仕事を任されます。ところがひょんなことから監視役のドイツ兵を殺してしまったために,カルタゴのハンニバルよろしくゾウ共々アルプスを越えて中立国スイスへ逃げることにすると云う,マイケル・ウィナーなので戦闘場面は無駄に派手ですが,風景もいいし,全体的には何だかノンビリしてユーモラスな脱走劇。オッチョコチョイのアメリカ人捕虜を演じるマイケル・J・ポラードがいい味出してます。『デッド・フォール』(米 原題・製作年知ラズ)なんて云うつまんないスタローン映画で久しぶりに姿を見ましたが,やっぱりイカれた役でした。
 それにしても,アメリカに渡ったウィナーは "Death Wish" をいつの間にやらシリーズ化になぞしてたり,それしかないのかお前はって感じで何だか哀しいです。

北海ハイジャック ffolkes (英 1978)
監督:Andrew V. McLaglen,原作・脚本:Jack Davies
音楽:Michael J. Lewis,撮影:Tony Imi,編集:Alan Strachan
出演:Roger Moore,James Mason,Anthony Perkins,Michael Parks,David Hedison,Jack Watson
 北海油田基地に物資を運ぶ船を乗っ取り,油田施設に爆弾を仕掛けてイギリス政府を脅迫する犯罪者集団。対するは政府の依頼を受けた民間警備会社。添景として,そこの社長は,沢山居る姉たちに幼少の頃より割りを食わされ続け,すっかり女嫌いになってしまった偏屈オヤヂ。
 映画雑誌で粗筋を読んで「これはまるでマクリーンの小説のようだ」とスタッフ・リストをあらため,どうやら彼は関係ないようだったので「なぁんだ」とか思ってたら,別の箇所に「慌て者のファンならマクリーンの原作かと勘違いするかも知れない」などとしっかり書かれてました。「そう云うお前はどうなんだチクショー」と苦笑いを浮かべたのも今じゃ懐カシイ思イ出デス。"North Sea Hijack" などとデタラメなアルファベットを,まるでそれが原題であるかのようにポスターに並べるのは恥ずかしいからやめて下さい。

スカイ・ライダーズ Sky Riders (米 1976)
監督:Douglas Hickox,原案:Hall T. Sprague,Bill McGaw,脚本:Jack de Witt,Stanley Mann,Garry Michael White
音楽:Lalo Schifrin,撮影:Ousama Rawi,Greg MacGillivary,Jim Freeman,編集:Malcolm Cooke
出演:James Coburn,Robert Culp,Susannah York,Charles Aznavour,Kenneth Griffith,Harry Andrews,John Beck
 風光明媚なギリシア――と,お約束を枕にして書くと,ひたすら曇天のギリシアばかり撮りたがるアンゲロプロスは何者かとも思うのですが,それはともかく,そこに住まうアメリカ人実業家(ロバート・カルプ)の妻子がテロリストに攫われ,そのことは,妻の昔の夫(ジェイムズ・コバーン)の知るところともなります。ちなみに彼は法律のどちら側でも商売してそうな風来坊パイロットで,奥さんに愛想尽かされても仕方のないお方。で,わずかな手がかりをもとに人質の居場所を突き止めてみれば,それは空からしか近づけなさそうな柱状の岩の上に建つ僧院。そこで彼はハンググライダーを使ったサーカス団をスカウトし,空からしか近づけない場所に空から近づくことにすると云う,イイ感じにB級なアクション映画。

ブラス・ターゲット Brass Target (米 1978)
監督:John Hough,原作:Frederick Nolan,脚本:Alvin Boretz
音楽:Laurence Rosenthal,撮影:Tony Imi,編集:David Lane
出演:John Cassavetes,George Kennedy,Robert Vaughn,Patrick McGoohan,Max von Sydow,Sophia Loren,Bruce Davison,Edward Herrmann
 第二次世界大戦が終結して間もない頃のドイツで起きた,ナチス軍資金強奪事件やジョージ・S・パットン・ジュニアの交通事故死など,様々な史実を仮説(虚構)で絡み合わせ,何とラッキー・ルチアーノまで登場させる贅沢サスペンス。やるせなさそうに上目遣いに金塊の行方を追う疲弊カサヴェテスと頑固やかまし倣岸おやぢケネディに始まり,冷血ホモ悪人ロバート・ヴォーンや指使いの面白い小悪党パトリック・マクグーハン,不気味殺し屋マックス・フォン・シドーに犯罪捜査部お坊ちゃんブルース・デイヴィスンと,何やら皆してそれっぽい楽しいキャスティング。ソフィア・ローレンは邪魔。ついこないだもやってましたが,マクグーハンはコロンボ警部に何度捕まるつもりか。

ミスター・ノーボディ Il Mio Nome e Nessumo (伊・仏・西独 1973)
監督:Tonino Valerii,原案:Fulvio Morsella,Ernesto Gastaldi (Sergio Leone の着想から)
脚本:Ernesto Gastaldi
音楽:Ennio Morricone,撮影:Giuseppe Ruzzolini,Armando Nannuzzi,編集:Nino Baragli
出演:Henry Fonda,Terence Hill,R. G. Armstrong,Geoffrey Lewis,Steve Kanaly
 ややこしくなるので三人称代名詞を使わずに述べますと――名無しの若いガンマン(テレンス・ヒル)が色々と画策して,引退を考えてる老ガンマン(ヘンリー・フォンダ)を“引退させず”,渋るフォンダ自身にフォンダの友人の仇を“討たせ”,挙げ句,ヒルにフォンダを“葬り去らせる”ことでフォンダを歴史に刻んで“引退させる”と云う,使役動詞でしか語れないイヤイヤ構成の珍妙重厚コメディウェスタン。意図的にむしろややこしく書いてるように思えるのは気の所為です。きっと。
 監督は一応トニーノ・ヴァレリーと云うことになってますが,彼の他の作品――『サハラ・クロス』(伊 1977 原題知ラズ)のような平坦活劇――を見るにつけ,レオーネは裏方に回ったふりして相当口を挟んだんじゃなかろうかと邪推せざるを得ません。或いはレオーネへのオマージュなのでしょうか。

真紅の盗賊 The Crimson Pirate (米 1952)
監督:Robert Siodmak,脚本:Roland Kibbee
音楽:William Alwyn,撮影:Otto Heller,編集:Jack Harris
出演:Burt Lancaster,Nick Cravat,Eva Bartok,Torin Thatcher,James Hayter
 "pirate" なのに何でわざわざ「盗賊」なのかは謎です。授業中に海賊の話しかしないので,半ば冗談ながらもその息子をして「親父の講義は取り敢えず学究の徒を育てるには何の役にも立たなかったはずだ」と云わしめた別枝達夫氏の著書に海賊映画のタイトルを列挙してる箇所があるんですが,その中の『真紅の海賊』とはやはりどう考えてもこの『真紅の盗賊』のことです。しかし間違える方に道理があります。「盗賊」としてくれたおかげで”正式な邦題”が覚えにくくてしょーがありません。
 まぁとにかくそんなわけで,これは海賊映画です。連続活劇です。ええ。異様に若く身のこなしも軽いバート・ランカスターが,マストからマストへ飛び移り,チャンチャンバラバラ大暴れ。骨董ギャグも骨董ご都合主義もテンポよく冴えに冴えてます。ハラショー!

633爆撃隊 633 Squadron (米 1964)
監督:Walter E. Grauman,原作:Frederick E. Smith,脚本:James Clavell,Howard Koch
音楽:Ron Goodwin,撮影:Edward Scaife,編集:Bert Bates
出演:Cliff Robertson,George Chakiris,Harry Andrews,Donald Houston,Angus Lenney
 メロドラマの王道を行ってそれなりに面白い原作が,何故か他愛のない戦意高揚映画に化けました。せっかくハリー・アンドリュースが出て来てるのに,締めのセリフが「彼らの魂は生きている」じゃ「彼ら」の魂もうかばれません。ついでに云えば当のハリーの魂もうかばれません。
 そんなわけで,内容はもうどうでもいいのです。ロン・グッドウィンの主題曲を背景に,本物のモスキートが飛び回るのをひたすら楽しめさえすれば。少なくとも,本物のモスキートがせっかく飛び回ってるのに全然楽しくない『モスキート爆撃隊』 Mosquito Squadron (米 1969)よりは遥かにマシです。ついでに云えば,本物のスピットファイアやハインケルがせっかく乱舞してるのにひたすらダルい『空軍大戦略』 Battle of Britain (英 1969)よりもまだ見られます。とか云ううちに思い出しましたが,『暁の出撃』 The Dam Busters (英 1955)を見てみたいものです。ランカスター爆撃機が飛び回ってボール落っことすヤツで,ジュリー・アンドリュースが出て来る方じゃありません。

ドラゴンスレイヤー Dragonslayer (米 1981)
監督:Matthew Robbins,脚本:Hal Barwood,Matthew Robbins
音楽:Alex North,撮影:Derek Vanlint,編集:Tony Lawson
出演:Peter MacNicol,Caitlin Clarke,Ralph Richardson,John Hallam
 具体的な映像になった瞬間,総てがつまらないものに思えて来てしょーがないので,「剣と魔法」めいた話は出来れば文字で,さもなければ記号映像で楽しみたく思い,詰まるところこの手の実写映画は一部のギリアム作品を除いてあまり好きではないのですが,中世と云うよりは古代な感じ,ケルトな感じ,チュニックな感じ,莫迦々々しく大仰な甲冑は出て来ないし,全体的に地味な造りが好ましかったり,暗闇に潜んで碌にディテールも判らない所為か尚更ドラゴン(ワイバーンと云うの?)が恐くてカッコよかったり――そんなような細かいのが積み上がった結果,この作品は割と気に入ってます。ヒロインも結構気に入ってるんですが,主人公の若造魔法使いがイカさないのがちょいと難。影の主人公の老魔法使い(ラルフ・リチャードスン)はステキ。

レイダース/失われた聖櫃 Raiders of the Lost Ark (米 1981)
監督:Steven Spielberg,原案:George Lucas,Philip Kaufman,脚本:Lawrence Kasdan
音楽:John Williams,撮影:Douglas Slocombe,編集:Michael Kahn
出演:Harrison Ford,Karen Allen,Wolf Kahler,Paul Freeman,Ronald Lacey,John Rhys-Davies,Denholm Elliott
 いにしへ連続活劇・現代風――って,気が付けば 20年も経ってて,世間ではクラシック扱いなんですね。全く期待してなかったのにウッカリ見に行ってやっぱり後悔した『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』 The Mummy (米 1999)のパンフレットでそのことを思い知らされました。年は取りたくないもんです。いにしへ連続活劇と云ったところで,ジャック・ターナーやらマイケル・カーティスやらよりは,30年代頃のニューススタンドに並んでたパルプ・ストーリーのノリがより直接的な土台になってるらしく,聞くところによると,「故に,この映画の本当の面白さはアメリカ人にしか判らない」と,あるアメリカ人はある日本人にのたまったそうです。眉に唾つけといて構わない話ではありますが,云われた日本人は,代替措置としてさしずめ『少年倶楽部』辺りを思い浮かべておけばいいんでしょうか。『鞍馬天狗』とか。いえ,読んだことはありませんが。

時空を超えた戦士・ビグルス Biggles (英 1985)
監督:John Hough,脚本:John Groves,Kent Walwin
音楽:Stanislas,撮影:Ernest Vincze,編集:Richard Trever
出演:Niel Dickson,Alex Hyde-White,Fiona Hutchison,Peter Cushing
 ジョン・ハフつながりで『ブラス・ターゲット』と一緒に思い出しといてもよさそうなもんですが,装いが違い過ぎる所為か出て来ませんでした。と云いつつ『ヘルハウス』 The Legend of Hell House (米 製作年知ラズ)だなんて如何にもどうでもいいのは出て来てた,とはどうしたことか。それはともかく,この作品も『失われた聖櫃』同様――と云うか,クレジットされてないけどこっちは往時のパルプ・フィクションの一つを直接原作としているそうで,とにかくパルプつながりと云うことでやっと思い出しました。“お気に入り”でも平気で忘れます。
 いや,それもともかく,現代のニューヨークやロンドンと第一次世界大戦の戦場とをどう云うわけか行き来できるようになってしまった青年が,更にそこでビグルスなるエース・パイロットと出遭ってしまったのが運の尽き,過去と現在を往ったり来たりしながらカイザーの秘密兵器を叩く手伝いをさせられると云う,下らなく愉快な話を真面目に楽しそうに作ってる感じの莫迦映画です。それにしてもあの音楽は何とかならないものか。

アドベンチャー You Can't Win 'em All (米 1970)
監督:Peter Collinson,脚本:Leo V. Gordon
音楽:Bert Kaempfert,撮影:Kenneth Higgins,編集:Raymond Poulton
出演:Tony Curtis,Charles Bronson,Michele Mercier,Patrick Magee,Fikret Hakan,Gregoire Aslan,Leo Gordon,Horst Janson,John Alderson
 こゆのを Soldier of Fortune と云うんでしょうか――20世紀初頭,「何かいい儲け話はないものか」と革命前夜のオスマン・トルコにやって来たトニー・カーティスと,「何かいい儲け話はないものか」と既にそこに居て兵隊崩れを束ねたプチヤクザの頭領やってるチャールズ・ブロンスンがヒョッコリ出会い,二人して政府の側についてみたり革命勢力に組してみたり,鼓胴弾倉のトミーガンかかえてエッチラオッチラ「いい儲け話」を捜し回るお話。最大の冒険ロマンな場面は,二人が船の舳先でジャガイモの皮をむいてるところかも判りません。見習い水夫の鑑。
 もともとはハワード・ホークスが撮る予定だったところ,スケジュールの調整が出来なかったんだか体調が思わしくなかったんだかで実現ならなかったのだそうです。結局,同年のブラケット=ウェインとのトリオによる『リオ・ロボ』 Rio Lobo がホークスの遺作となりました。

八点鐘が鳴るとき When Eight Bells Toll (米・英 1970)
監督:Etienne Perier,原作・脚本:Alistair MacLean
音楽:Walter Stott,撮影:Arthur Ibbetson,編集:John Shirley
出演:Anthony Hopkins,Corin Redgrave,Robert Morley,Jack Hawkins,Derek Bond,Nathalie Delon,Peter Arne
 イギリス近海で次々姿を消す金塊輸送船の行方を追う政府の役人。
 小説の方に先に親しんじゃうと大抵の場合映画化作品はつまらないもので,マクリーンのも『ナバロンの要塞』 The Guns of Navarone (米 1961)やら『北極の基地/潜航大作戦』 Ice Station Zebra (米 1968)やら『黄金のランデブー』 The Golden Rendezvous (英・南ア 1977)やら数だけはやたらとありますが,そのどれもが控えめに云ってもあまり面白くはありません。ストーリー展開はさて置き,登場人物や物語世界の雰囲気が違ってたりスケール感がなかったり。そんな中で,この映画は原作の持ち味を比較的殺さずにいます。スコットランドの陰鬱なロケーションもよかったし,何より,主人公たちの減らず口が減らされずに済んでいるのは奇跡的。やはりマクリーン自身が脚本を書いた『荒鷲の要塞』 Where Eagles Dare (米 1968)は,イギリスの陸軍情報部に協力させられるアメリカのユーモラスな戦略事務局員をイーストウッドがやるとなった時点でもう絶望的で,彼は「オレ向きじゃない」と自分で寡黙なキャラクタに書き換えてしまいました。何かもう,残念。

どうぶつ宝島 (1971)
監督:池田宏,原作:Robert Louis Stevenson,脚本:飯島敬,池田宏,アイデア構成:宮崎駿
音楽:山本直純,美術:土田勇,作画監督:森康二
出演:松島みのり,天地総子,小池朝雄,富田耕生,高木均,八奈見乗児,神山卓三,山本直純
 日本映画が全然ないことに気がつきました。
 ご覧になれば,監督が宮崎駿となっていないのを不思議に思う方はかなりいらっしゃるかと思います。要するにそう云う楽しい漫画映画。「アイデア構成」なる職種は寡聞にして此処でしか見たことありませんが,一介の絵描きから更に深いところへ踏み出す対外的な宣言と云う処なんでしょうか。後の作品に連なる何もかもが――概ね何もかもが詰まってます。それにしても,森康二の絵ってどうしてああもシャープなんでしょう。もうウットリ。

ルパン三世/カリオストロの城 (1979)
監督:宮崎駿,原作:モンキー・パンチ,脚本:宮崎駿,山崎晴哉
音楽:大野雄二,美術:小林七郎,作画監督:大塚康生
出演:山田康雄,小林清志,増山江威子,井上真樹夫,納谷悟朗,島本須美,石田太郎,宮内幸平,永井一郎
 宮崎=大塚コンビの早過ぎる最終作――のような気がします。このあとにも何か作ってたかどうか,よくは知らないんですが…
 第二シリーズ以降の『ルパン三世』は,井上真樹夫も増山江威子も大野雄二も効果音も――いえ増山江威子は『一休さん』のナレーションとかやってる分には平気なんですけど――とにかく音関係が生理的にダメで,でもやっぱりこの映画の中身自体は面白いので何だか困ったもんです。
 まるで『カリオストロ伯爵夫人』等に関係がありそうなタイトルですが,大まかな筋立て自体は同じアルセーヌ・リュパン・シリーズの『青い瞳の少女(緑の目の令嬢?)』を元にしているようであることに,映画を見て大分経ってから気がつきました。いえ別に斯う書いたからと云って,むかし『カリオストロ伯爵夫人』を買って読んだら全然関係ない上に全然面白くなかったのでちょっと逆恨んだとかそんなことでは全くありません。『奇巌城』面白いなぁ。

椿三十郎 (1962)
監督:黒澤明,原作:山本周五郎,脚本:菊島隆三,小国英雄,黒澤明
音楽:佐藤勝,撮影:小泉福也,斎藤孝雄
出演:三船敏郎,仲代達矢,加山雄三,平田昭彦,田中邦衛
 よく見たら唐突に山本周五郎原作となってますが,とうやら桑畑三十郎とは何の関係もない小説を無理矢理引きずり込んで続編に仕立て上げたもののようです。今回,目の前に椿があったので椿三十郎――尤も,もうすぐ四十郎だがな。いや,こんなセリフだったか…ともかく,ユーモアも黒ユーモアもアクションもバイオレンスもキビキビと,ちょいと軽いんですけど娯楽映画としてコンパクトにまとまってて,少々タルかった『用心棒』(1961)よりこちらの方が好きでした。今見たら前作の方が面白いと感じられるのかも知れませんが。

ミツバチのささやき El Espiritu de la Colmena (西 1973)
監督・原案:Victor Elice,脚本:Angel Fernandez Santos,Victor Elice
音楽:Luis de Pablo,撮影:Luis Cuadrado,編集:Pablo G. Del Amo
出演:Ana Torrent,Isabel Telleria,Fernando Fernan Gomez,Teresa Gimpera,Queti de la Camara
 唐突にスペイン国籍映画です。スペインロケのマカロニウェスタンでも,赤狩りでスペインに逃れざるを得なかったハリウッド人が撮った義和団事変映画でもありま――ああ,スイマセン。これはどうにもコメントのしようがなくて挙げ辛かったんですが,やはり入れておきます。遥か20年近いその昔,何故か見た『スターログ』と云うSF雑誌に,やはり何故か載っていた紹介記事のスチルに写っていたアナ・トレントに一目惚れ――ただそれだけ。
 あの目がね…
 六本木単館上映だなんて如何にも小洒落てそうな環境に,怖気を震いつつも見に行きました。エラいぞオレ。ああ云うとこで売ってるパンフレットって小洒落てるばかりで資料性が低いのでキライです。いえそれより,その雑誌のその号は,『バンデッドQ』のフィルムストーリーも載ってて一粒で二度おいしかったので買っちゃいました。そして,捨てたはずはないのに,見当たらない…

カーツーム Khartoum (米・英 1966)
監督:Basil Dearden,脚本:Robert Ardley
音楽:Frank Cordell,撮影:Edward Scaife,編集:Fergus McDonell
出演:Charlton Heston,Laurence Olivier,Richard Johnson,Ralph Richardson,Alexander Knox,Michael Hordern,Nigel Green
『ミツバチのささやき』の直後にこれはどうかと思わないではないですが,“義和団事変映画”と書いたら何となく思い出しちゃいました。1880-90年代のスーダンで起きた反英抵抗戦争の一幕:首都カーツーム(ハルトゥーム)をめぐる攻防戦を描いたスペクタクル絵巻。血みどろの戦いを戦う双方の似たような資質の指揮官たちの栄光も挫折も,いずれ等しくナイルの河と砂漠の広大さ,ひいては悠久の時の流れの中に呑み込まれて行くあまたの幻影の一つに過ぎない,と云う主調で綴られます。
 そんな語り口に騙されてか,大昔のとある深夜にTVで見終えたら,あの“喧騒”はもしや一幕の夢だったのではないか,との妙ちくりんな印象の中に取り残されました。他愛ないです。ただ眠かっただけかも知れません。
 ちなみに,このフランク・コーデルとロン・グッドウィン,マイケル・J・ルイスは 1960-70年代イギリス映画音楽に於ける御三家みたいなもんです。ええ,あくまで,私にとって。

パッセージ/死の脱走山脈 The Passage (英 1978)
監督:J. Lee Thompson,原作・脚本:Bruce Nicholaysen
音楽:Michael J. Lewis,撮影:Michael Reed,編集:Alan Strachan
出演:Anthony Quinn,James Mason,Malcolm McDowell,Christopher Lee,Michael Ronsdale,Patricia Neal,Peter Arne
 そんなわけで,再びルイス氏のご登場。むかし日曜洋画劇場でやってたのを見たのですが(もちろん淀川翁の解説付き),これはどうも日本では劇場未公開のようです。ナチスの兵器開発に協力させられそうになった科学者(ジェイムズ・メイスン)一家をフランスからスペインへ逃がすに,レジスタンスに頼まれたバスク人羊飼い(アンソニ・クイン)が,留守宅の羊の餌がいつまで持つか気にしいしい渋々とピレネー越えのガイドを務めるサスペンス映画。彼らをしつこく追い回す劣等感反動サディストのゲシュタポ将校をマルカム・マクダウェルが演ってて,嵌まってると云うかやり過ぎと云うか,お前絶対愉しんでたろ,とツッコミたくなるその悪乗りぶりは,どうせなら此処での嫌味を 2/3 程度に抑え,余った 1/3 を『ブルー・サンダー』 Blue Thunder (米 1983)へ回しとくれよ,と思ったほど。いや,あっちのマルカムがイマイチだったもので…
(ビデオでは『ザ・パッセージ ピレネー突破口』と云うタイトルになっていたようです)

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